《転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)》盤上の迷宮航路にご招待 82

アホみたいな、それこそ冗談の様な死者數を出した事件の犯人……それがこの知的眼鏡のお姉さんだという。そして今まさに連行されようとしてる彼を彼は救いたいらしい。

けと流石に八億人は……ね。それが事実だとしたら、一罪はどれほどになるのか? というか、一人の命で償いきれるものじゃないと思う。よしんば死刑だったとして……それで罪が償えるか? といったら……ね。まあこの彼はそもそもが納得いってないようだけど……

『あれは事故だ!! 仕方なかったことだ!』

なるほど、事件ではなく、事故とすることで彼の責任を回避しようと……そういう事らしい。確かに事故となると個人の罪として裁くのは……

『それでも彼の責任が無くなることはない。なにせ彼は責任者だ。その責任がゼロになることはない』

確かに。責任者が責任逃れをしようとするのはそれもよくあるよね。なんのための責任者だ! と言いたくなるような……さ。実際八億人を殺してしまった責任なんて、それこそ逃げ出してもおかしくない。

でも知的人さんは逃げずにここにいる。

『それは……それでも!』

『もういいんです』

なにかまだいいそうだった彼に、その凜とした聲が突き刺さる。聲を発したのは知的人さんだ。

『これは、私の責任です。他の誰でもない。私の取るべき責任なの』

どうやら知的人さんは逃げる気は微塵もないらしい。はっきりいって格好いいと思った。私なら八億人の命の責任を取らされるとなったら逃げるけどね。

無理じゃん……だって無理じゃん。てかどんなふうに責任取らせられるのか、それだけで怖い。

『それがなんだ!! お前は天才だ!! 俺と並ぶほどの天才だ!! その頭脳は人類の寶だろう。死んだ奴の何人が人類の進歩に貢獻できる?

斷言してやる!! 八億人の中にお前ほどの天才はいない!! 命の価値は平等なんかじゃない!! お前なら八億人の命を償えるだけの進歩を示せるはずだ!! これは! 人類の損失だぞ!!』

そんな主張を力いっぱい彼はした。誰の目も憚ることなく、彼はそれを言い切ったのだ。族がこの場にいたら、毆られても文句は言えない主張だ。けど、彼はそれを本気で思ってる。

言い訳とかじゃない。そんなの一ミリもない。ただただそれが彼の本心だと、私にはわかる。

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