《天使転生?~でも転生場所は魔界だったから、授けられた強靭なと便利スキル『創魔法』でシメて住み心地よくしてやります!~》第512話 アバミニオンの捕獲と漆黒アリの死骸回収

「ところで……最近何かありました? いつもより路上にヒトが多い気がするんですけど……何だか蟲を大量に掃除してるヒトが多いですよね」

「そうなんですよ! ちょっとばかり大変だったんですよ! アバドンが襲來して、それと一緒に凄い量の蟲が飛來しちゃって! 路上の掃除してるのは蟲の死骸を片付けてるのが多いのかな?」

「ああ、これがかの有名なアバドンの跡なんですね。樹の國には來たことがないので知りませんでしたよ」

そういえば樹の國って、木々が特殊な酵素を放ってアバドンが発生しないようになってるんだっけ。 (第271話參照)

発生を抑制するだけじゃなくて、寄り付きもしないのかな?

「アバドンって植大好きなんですよね? 何で來ないんですか?」

と、一応知らないていで聞いてみる。

「う~ん……私もアバドンが來ない國の者なんで詳しいことは分からないんですが、大森林の木々が出す酵素の複合効果によって、アバドンが寄り付かないんじゃないかと考えられています」

そういえばこのヒト、植學者でもあるって言ってたな。

々調べてそこに到達したのかな?

「アバドンってイナゴの王なんですよね? じゃあユグドの大森林にはイナゴやバッタが居ないんですか?」

「いえ、普通に大森林にも居ますよ。でも、アバドンが引き連れてるイナゴたちは大森林のものとは違ってるようなんです」

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「違ってるって、見た目とかですか?」

「見た目が違ってれば分かり易いんですけどね。違うのは主に帯びた魔力の質ですかね。アバドンが引き連れているイナゴやバッタには特殊な魔力が混じって“アバミニオン化”とも言うべき質に変化しているようなんです。どうやらこの特殊変化した魔力が食の旺盛化や、繁の増長に一役買っているようです」

「へぇ~、何か拠となるものが見つかっているわけですか?」

「以前、アバミニオン化したイナゴを手にれる機會がありまして、それを大森林に持って帰ったところ凄い勢いで蟲カゴの中を暴れ回って、ししたら衰弱してしまい、數日後に死んでしまいました」

「それって……大森林の空気がアバドンにとって毒だったってことですか?」

「數日生きてたのを考えると毒とまでは言えないというじでしょうか。特殊変化した魔力が大森林の酵素を拒絶していたのかもしれませんね。その時は殘念ながら確定できる材料は得られていません。なくともアバドンにとって嫌な匂いとか、毒に準ずる何かを放っているのではないかと考えられます」

三大兇蟲アバドンの発生原因を知らないから、嫌な匂いって結論に到達したのかな?

「それと死骸を調べたところで二ミリから五ミリほどの魔石が摘出されました。恐らくアバドンに接した時點で生されるものと考えられます。もっとも……保管して詳しく調べようとしたところ、いつのまにか消えてしまっていたので、更に詳しく調べるには至りませんでしたが……」

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アバドンに接したイナゴたちを狂暴化させる何かが出てるってことだろうか?

魔石はアバドンの魔力が結晶化したもので、ユグドの大森林では存在が許されなかったとか……もしくは、調べてる最中にアバドンが倒されたために消滅したか、そんなところかな?

などと頭の中で考えていたら、フリアマギアさんはもう別の方向を見ていた。

「あ、よく見たら植木とか街路樹にもいますね、イナゴたち」

「あれはまだ対処中のやつですね。あのまま放置しておくと町全にある葉っぱという葉っぱを食べられちゃうんで駆除してくれるヒトを募って、今街路樹の掃除をしてもらってます」

「町全ですか、凄いですね……じゃあ……ちょっとサンプルの収集に行って來たいと思います!」

「サンプル? 何のですか?」

「以前のアバミニオンではあまり芳かんばしい果が得られませんでしたので、この機に生きてるサンプルを収集したいなと」

「でもアバドンはもう倒してしまってるので、もしかしたらここに殘ってるのはアバミニオンではないかもしれませんよ?」

「まあそれでも、『アバドンを倒された後のイナゴにはアバミニオンとしての質は無い』って実験結果が得られますので!」

そんな話をしていたらフリアマギアさんの側近の一人、パトリックさんが凄く疲れた様子で何かを持って帰って來た。

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「お、ご苦労様。見つけた?」

「ハァハァ……は、はい、何とか……持っている行商人が一人いました……」

持って來たものは蟲カゴと蟲取り網だった。

「もしかしてさっき申し付けた重要な任務ってのは……?」

「はい、蟲カゴと蟲取り網の手です。アルトレリアにはありませんでしたので、行商人のところへ走ってもらいました」

アルトレリアには無い? リディアは去年から蟲取りしてるから、そんなはずは無いが……

このアバドン騒で売り切れてるんだろうか?

「それ使って捕まえるんですか!?」

「はい。この中にれて研究材料にします」

「そ、そうですか。行ってらっしゃい」

「それにしても、アルトラ殿はこれで三大兇蟲コンプリートってわけですね。一年足らずの間にコンプリートなんて、持・っ・て・ますねぇ」

「……そんなことをコンプリートしたところで全く嬉しくないです……」

特にジャイアントアントの時は死ぬかと思ったし……

「アバドンは対処が難しいという話を聞いたことがありますが、後でどうやって対処したのか聞かせてください! 數ヶ月かかるのをたった數日で対処した方法を!」

ゲッ……また詰問されるのか……アバドンの話をしない方が良かったか……いや、いくら蝗害こうがいが見たことない景だからと言っても、彼なら多分すぐ気付いただろう。

「じゃあ私は町を一周回ってきます!」

今回はすぐに解放されたが、後々また詰問が待ってるんだろう……また何か言い訳を考えておかないとな……

その日の夜にカイベルに『ディメンショナルオーバー』の死骸を一部分でも回収してきてもらうよう頼んだところ、空間魔法を使える條件下にないため、往復一週間ほどかかると言われてしまった……

そのため、その場所を教えてもらって次の日に私と共に【ゲート】で現場に赴くことに。

次の日――

ディメンショナルオーバーを倒した巣部に來ている。

「おぉ……これがジャイアントアントの卵の跡か……この形、何だか見た目がアニメに出てくる培養マシンみたいだ……」

沢山の破壊された巨大な卵嚢らんのうがある。

アリは通常卵嚢らんのうを作らないそうだが、帝蟻がカマキリみたいな生を取り込んで、そういう質を持ったのではないかと考えられる。

もしこれが殘っていて、ここから多數の特殊個が生まれていたかもしれないと想像すると、ちょっと薄ら寒さをじる……

の中には壊された卵だけでなく、ないものの働きアリらしき死骸も殘っている。

上半分が綺麗に分斷された死骸……これがカイベルがやった【次元斷ディメンション・キル】とかいう空間魔法の痕跡か。

「何か働きアリの數なくない?」

「ここに倒れているのは卵のお世話をしていたアリだけですので」

「他はどうしたの?」

「時間魔法で塵にしました。片付けるのも面倒でしたので」

怖いこと言うなぁ……

そういう使い方もできるのか……私には怖くて実行できそうもないが……

「何でこれと卵の破壊跡は殘したの?」

「後々風の國による調査に必要になるかと思いましたので」

「なるほど……」

「ですがディメンショナルオーバーをアルトラ様が倒したことにするには完全に埋めて隠滅してしまった方が良さそうですね」

切斷されたアリと卵を橫目で見ながらカイベルの後を付いていくと、目的の死骸のところに著いたようだ。

「アルトラ様、これです」

そこには黒いをした人型に近い容姿のアリの死骸が寢転がっていた。

まだ他の生に食い荒らされておらず、死んだ時のほぼそのままの狀態らしかった。

致命傷になった傷は深く鋭い。斜めに上半と下半が完全に分斷されている。

「これか……じゃあ回収しようと思うんだけど……どこを回収したら良いと思う?」

「全部持って行けば良いのではないでしょうか?」

まあ切斷時に流れたらしきとかも乾いてるし、全部持って行くか。

「全部が面倒なら報の多い頭部と腹部をお勧めします」

「頭部と腹部って、切斷して?」

「はい」

流石に人に近い形をしている生の頭部と腹部だけ切り離して持って行くのも抵抗がある……上と下に分斷されて多軽くなってるだろうし、全部持って行くか。

カイベルより大分大きい死だからあまりりたくは無いが、持って行くにはらなければ仕方ない。

両脇を抱えて持ち上げようと死骸に手をかけたところ――

「あ、ご注意ください」

――と言うカイベルの一言。

何を? もう死んでるし注意するところなんか……

そう思考するも、既に摑もうとしていた手は止まらず、脇を僅かに持ち上げた瞬間、

ワサワサワサ……

「ギャアァッ!!」

外骨格の中から蟲が大量に出て來た!

慌てて両手を上下に激しく振りして、手に付いた蟲を振るい落とす!

外骨格に食べられたような形跡が無く外面は綺麗だったから、中に小蟲が潛んでいることにまで想像していなかった!

「死骸を食べる蟲ですね。もう二週間以上経ってますし、恐らくの中は蟲だらけでしょう。外骨格はいので全く食べられてはいないようですが」

「えぇ……も、もうりたくなくなったんだけど……」

だとしたら中のも腐ってるのでは?

いや、人型とは言え一応アリだからは無いのか? でもこの大きさでが無いなら何が詰まってるんだ?

いやいや、『』は無かったとしても、筋繊維とか神経とかはあるはずだから、いずれにしても腐ってるのでは?

ちょっと勢が変わったからか、微かに腐敗臭がしてきた……

「うっ……くっ……」

カイベルの方を見上げて――

「で、どうすれば良いと思う?」

「死骸を食べる蟲を全部取り除けば良いのですか?」

「可能なの!?」

「はい」

「じゃ、じゃあお願い……あとついでに袋にれてもらえるとありがたいけど……」

りたくないし……

「承知しました。まずは蟲を取り除くので々お待ちください」

すると土魔法で死骸ごと地面の土を盛り上げて手臺のような土臺を作り、蟲を取り除こうと近付く。

「あ、待って手袋用意するから」

質魔法で手袋とピンセットを作りカイベルに渡す。

すると、外骨格を風魔法で切り開き、上側になっていた外骨格の一部を一旦取り外した。

ペリペリという微かな剝離音を立て、ヌトッとした粘が糸を引く。

中に充満したガスや臭いと共に、衝撃的な景が目に飛び込んできた……

「うわ……グロい……」

これがもしテレビで放送されてたら、完全にモザイクかブラックアウト処理だわ……

その後、凄い早さで部に湧いた蟲を取り除き始めた。

そして三十分ほどで――

「終わりました。もう蟲は殘っていないでしょう」

最後に取り外した外骨格を元の位置に被せ、切斷面を合わせて極小規模の火魔法で切斷した部分を溶かして溶接。

「あ、ありがとう。じゃああとは袋に詰めて【亜空間収納ポケット】にれてしまいましょうか」

中の腐敗が流れ落ちないように慎重に上半と下半を別々の袋にれ、【亜空間収納ポケット】に放り込んで回収完了。

の大きさの割には軽かった……部は結構蟲に食べられてるっぽい……

「カイベル、ご苦労様……」

「はい」

蟲除去に使った手袋とピンセットは……何だかりたくないが付著していたので燃やして処理、ピンセットはドロドロに溶かして処分、最後に中規模の土魔法でアリの巣を埋めて、この場を後にした。

我が家に帰ったその日の夜――

フッと思い出したことを聞いてみる。

「そういえばさ、デュプリケートって今どうなってるの? 特殊個の中で唯一生き殘ってるんでしょ? アスタロトの能力でもう土の外には出られないんだよね?」 (能力については第481話參照)

院中詳しく聞いた話によれば、地上ではアスタロトが生した毒が風に混じって飛ぶから、もう土中以外で生きられないと聞いている。

「今でも迫りくる死に必死に抗あらがっているようですね。毎日毎日大量の分を生み出して何とか全滅しないように命を繋いでいるようです」

「毎日大量の分を? それって増えていって、今後脅威になったりしない?」

「アスタロト様の毒は雨水などで土中にも流れ込むことがあるので、増えた先からどんどん消滅していってるようです。一所ひとところに滯在しても、近くで分が死ぬ度にどんどん地下深くへと潛って行ってるようですね」

「地表に近い方が毒との遭遇率も高いからってこと?」

「そのようです」

「そうすると、今度は地下で増えていかない?」

「地下に潛れば潛るほど気溫が上がっていきます。『ブレイズタイラント (赤アリのこと)』のように、耐熱能力が高いわけではないので、いつかは地表からの毒と地下からの高熱との板挾みになってどうにもならなくなります。土中でゆったり過ごすなどという生活は到底送れないでしょうね。ですので、今後も極端に増えることはないし、地上に出られない分、亜人が遭遇する確率も限りなく低いのでデュプリケートによる被害は出ないと考えて良いと思います」

死ぬまで死に怯えて過ごさなきゃいけないというのはちょっと気の毒なじもするが……亜人からすれば増えないんなら一安心か。

「でも、毒の半減期が五十年で、その後も百年に渡って大気に混じって飛ぶと予想してるのよね? もし萬が一そこまで生き殘ったら脅威にならない?」

「特殊個とは言え、アリですのでそこまで壽命が持ちません。彼が生きて地上に出られる日は永遠に來ないでしょう」

「分増やしても細胞が若返ったりしないの?」

「自をそのままコピーするようなものですね。他の素を混ぜても壽命は変わらないようです」

「そう……」

もう一度言おう、亜人にとって害蟲とは言え、この世に生まれ出でて數日で死に怯える生を運命づけられるなんて……何だか気の毒な人生、いや蟻生だ……

そして次の日の朝――

フリアマギアさんに『ディメンショナルオーバー』の死骸を渡すと、その日のうちにアルトレリアを離れた。

風の國ストムバアルへ行った後、一旦樹の國ユグドマンモンに帰ったらしく、數日の間姿を見なかったが、しばらくしたらまた嬉々としてドアの調査に戻っていた。

アルトレリアに帰って來た後に聞いた話によると、蟲カゴで持って帰ったアバミニオンについては、ただのイナゴとバッタだったそうだ。やはりアバドンが生きている時に限り、アバミニオンとしての質を持つらしい。解剖しても魔石は出てこなかったとか。

その後は、生態系の関係で樹の國へ放すわけにもいかなかったため、油でカラッと揚げたり、乾燥させてすり潰してクッキーにしたりして食べてしまったのだとか。

ディメンショナルオーバーの死骸は風の國に引き渡されたらしい。

その後日、帝蟻との親子関係、働きアリや兵隊アリとの相違が証明され、不安の種は無事潰えた。

ここ最近ずっと蟲の話をしてますね……(^^;

蟲の話は今回で終わりです。

次回は10月10日の20時から21時頃の投稿を予定しています。

第513話【発電施設とアルトラ邸への電気設備新設】

次話は木曜日投稿予定です。

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