《天使転生?~でも転生場所は魔界だったから、授けられた強靭なと便利スキル『創魔法』でシメて住み心地よくしてやります!~》第518話 アルトレリアに出來た小學校の検 その3

次に訪れたのは家庭科室。

「ここは各機に水道とコンロ? 料理する部屋ですか?」

「そうだね。料理だけじゃないけど、主に家庭に関連する座學以外の実踐的なことを學ぶ部屋かな」

「全員參加ですか?」

「その予定だけど……何か疑問でも?」

「いえ、わたくしは家のことには関わっていないので、嫌がる子とかもいるのではないかと」

「そりゃ居るかもしれないけど、それでも全員參加だね。子供の頃って何が自分に合ってるのか分からないし、幅広く何かを経験することで、自分に合うものが見つかるかもしれないしね」

「なるほど」

もっとも……大人になっても何が自分に合ってるか見つけられない人はそれなりに居るだろうけど……

「調理とかも後で取り揃えるのですか?」

「そうだね。それらが無いとこの部屋では何もできないからね。給食室同様に電子レンジやオーブンレンジも必要かな。開校までにきちんとしておかないと」

「その給食室を家庭科室にすることはできないのですか? そうすれば備品臺も浮くのでは?」

「…………それだと子供たちの給食はどこで作るの?」

「そ、そうですね……」

「それに調理だけじゃなくて被服に関することとかもやるからミシンやら針やら裁も必要になってくる。衛生的な面を考えても給食室と一緒にはできないよ」

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まあ、トロル族は免疫力もバカ高いから衛生的な面は多無視しても大丈夫そうではあるが……

他國の家族が生活する國になってきた以上、その子供が通うことも想定される。トロル族以外の子の免疫力が高いかどうかは分からないから、やはり清潔にしておくのがベターだろう。

「しかし機械を沢山導するとなると、それなりにお金がかかってしまうのでは? だとすれば給食の提供か家庭科室の備品のどちらかを削った方が良い気がしますが……?」

確かに……アルトラルサンズは新興國だし、まだまだ資金も潤沢にあるとは言えない。

多分『給食』が提供されるってところだけ見ても、舊トロル村のヒトたちにとっては一大事だろう。

が、

「その提案はもっともだけど、やっぱりここは削るべきところではない気がする。次世代を擔う子たちを育てるのだから、ここを削るなら別のところを削ってでも、教育の方を重要視したいと思う」

「そこまでですか?」

「子供をきちんと育てられる環境でないと、國が滅びるからね」

「我々の常識からすれば、子供など放っておけば勝手に育って行くと思っていましたが……」

「まあ、勝手に育つことは育つと思うよ。栄養不足でも貧困でも食べられてさえいれば生きられるし、放っておいたって何とか子供なりに考えて生活しようとするし。でもリーヴァントは栄養不足で育ってみてどうだった?」

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私のその返答に顎に手を當ててしの間考え、

「………………あまり良いとは言えませんでしたね。生活環境も泥に塗れた環境でしたし。やはり多発展したからには次世代にはそれなりの食生活を送らせるべきだと思います」

「でしょ? そういうわけだから、なるべくなら國政よりこちらを優先させて。とは言え最高級の備品を備えるなんて余裕も必要も無いから、最低限勉強に支障が出ないような環境整備を」

「分かりました」

家庭科室見に來て、こんな重い話をすることになるとは思わなかったな……

次は音楽室。

「ここは何の部屋ですか?」

「音楽室だね」

「音楽を勉強するのですか? 音楽って勉強するものですか? 音楽なんて思い思いにその辺りにあるものを打ち鳴らすくらいのものですよね?」

ここって楽が存在したことがないから、リーヴァントの認識はその程度ってわけなんだな。

「音楽ってのは実に幅広くてね、リーヴァントが言うような打ち鳴らすのももちろん音楽の一種なんだけど、弦楽やら打楽やら管楽やら鍵盤楽やらと沢山あるんだよ。それから、聲楽や歌劇、オペラ、演劇を経て、テレビ映像、映畫なんかでは効果音やBGMが創作され、果ては聲優やら歌手やらバンドやらVtuberやらが生まれてくるまでに発展するんだよ」

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「すみません、半分以上何を言ってるか分からないのですが……」

「まあ、要するに楽しいことは音楽から発生すると言っても過言ではないってことかな。つまりリーヴァントが知っている音楽はほんの小ぃ~~さな部分の更に狹い範囲の一部分ってわけ」

「はぁ……」

「以前水の國アクアリヴィアに行った時にどこからか音楽が鳴ってたりしなかった?」

「…………ああ! そういえば! 路上でも行く先々でもそれぞれ違う音楽が流れていました! あれが音楽! 我々が打ち鳴らすものとは大分違いますね!」

「そういうのを生み出せるように、子供の頃に音楽の基礎を勉強するのがこの音楽室ってわけ」

「なるほど! これは確かに我が國が発展するのに必要な気がします! ところで……ここにった時から気になっていたのですが、壁中だらけですね……これには何の意味があるのですか?」

「音楽室って大きい音を立てるからね、このが発生する振を軽減させてくれて防音になるのよ」

「ほぉ~、そんな機能が」

「まあ完全防音ってわけじゃないから、いくらかは外にれてしまうだろうけどね」

その“いくらか聞こえる音”までシャットアウトしてしまうと、『學校』での活ではないみたいだし、完全防音にする必要は無いだろう。

れてくれた方が音が聞こえた時に、『あ、音楽室使ってるな』って分かって、ちょっとワクワクするし。

「壁にかかってる深い緑の板は何ですか?」

「え? 黒板だけど……」

「何に使うんですか?」

あ! このヒトまだ黒板を知らないのか!

この町って黒板よりホワイトボードの方が導が先だったから!

役所で會議する時はホワイトボードだったもんな。

「児たちからよく見えるように、あそこに先生が字を書いて勉強を教えるの」

「ホワイトボードと同じ用途ということですか? ホワイトボードではダメなんですか?」

「う~ん……線が細いから見えにくいんじゃない?」

「いや、この部屋程度の距離なら部屋の端からでも見えますよ!」

「そりゃ、あなたたちは目が良いから後ろに居ても見えるだろうけど……他の種族、特に都會から來た子たちは多分それほど目が良くないと思う。発展してる都市部ほど視力の低下は顕著だからね。黒板にチョークの方が線が太い分多は見え易いと思う」

日本では最近ホワイトボードとスクリーンを併用することが増えたそうだが、そんなデジタル環境はまだ魔界のどこにも無い。

『デジタルを人間に伝えた悪魔がいない』 (第291話參照)ってところから考えるに、デジタル分野は地球の人間たちの方がいくらか先を行ってるらしい。

「この五本の線は何ですか? 邪魔では?」

五線譜を邪魔扱いするなよ……

「それは音楽の授業をするのに必要な要素だからそれで良いのよ」

「あ、よく見ればこの黒板左右にきますね。中にもう一枚黒板が」

「中にある黒板は五線譜が無いから、普通の黒板として使える仕様だよ。さて楽もまだ無いし次へ行きましょう」

次は理科室。

「ここも各機に水道があるのですね」

「手に付いたら危ない薬品とかも扱うからね」

「子供が? まさかが溶けたりなんて薬も……?」

「使うよ」

「危ないじゃないですか!!」

「まあ流石に即座に命に関わるような薬は使わせないから。薬品が付いても洗い流せるように水道もあるわけだしね」

溶けるって言ったって、手にちょっと付いた程度なら洗い流せばせいぜいヒリヒリするくらいだし、小學生レベルで劇薬なんか使うわけないし。

まあ……服に塩酸がかかったのを知らずに生活してて、丸く破れてしまったって人が居たが……流石にに付いたら分かるだろうし。

「もう一つ部屋があるようですね」

「そっちは理科準備室だね。授業に使うんなものを置いておく部屋」

――なんだけど……実はこの理科準備室、ほぼったことがないから何があったかすらほとんど知らない。

確か……古いビーカーやら試験管やらが沢山置いてあったのは覚えてる。當時はさっさと捨てれば良いのにとか思ったこともある。

他には……人模型があったな。あとホルマリン浸けとか。魚だかカエルだかを解剖したものがってた記憶がある。しばらく授業で使ってないのが丸わかりで、ホルマリンが乾いて固まってちょっと汚くなってた記憶もあるわ……

私らの時にはどっちも授業で使わなかったから、『何のために置いてあるんだ? あれはいつ使うんだ?』とそれが授業に登場する日を楽しみにしてたけど……結局卒業まで使わず仕舞い。きっと時代にそぐわなくなって使わなくなったんだろう。

「あ、既に何か置いてありますよ」

「え? …………ああ、そういえば來年開校に向けてアクアリヴィアに発注した『理科教材セット一式』の一部が、手違いでかなり早く來ちゃったって言ってたっけ。これのことかな?」

「人形に見えますが……半分皮剝がされたようで、何だか気持ち悪い人形ですね。作るのに失敗しているようです」

「人模型だね。サイズは私が見たことあるものより大分小さめだけど」

確かに……教材セットの資料には『人模型』の文字があったはずだけど……

模型って普通1/1サイズとかじゃないんだろうか?

これはどう見てもフィギュアくらいのサイズしかない。まさか日にちだけでなく、発注までミスってる?

「おぉっ!? よく見ると複數ありますよ!」

「臺座に名前書いてあるね。『亜人 (スタンダードタイプ)』……何だコレ……?」

スタンダードタイプ? 人模型だけで複數あるのか?

こんなの聞いてないぞ?

「こっちに沢山あります。『人魚タイプ』、『人馬タイプ』、『人蜘蛛タイプ』、『人蛇タイプ』、『牛人タイプ』、『山羊人タイプ』、『羊人タイプ』、『鳥人タイプ』、『竜人タイプ』、その他にも様々な『獣人タイプ』などなど……」

「人模型だけで何個あるのよ……」

どれもこれも臓の位置やら數やらが全然違っている。中にはドラゴンの『息袋』 (第430話參照)のように人間には無い、牛人のように胃袋が複數あるタイプも……

この世界の人の勉強って大変だわぁ……特に醫者になろうってヒトはその違いにかなり苦労することだろう。

「あ、奧にまだ何かあるようですよ! 骨……ですね」

「骨格標本か……こっちも人模型同様に小さめだわ」

あ! 何で1/1サイズじゃないのか今分かった。

魔界の亜人で人模型を作ろうとするとそれぞれの種族ごとにの形が違い過ぎて、『人間』のように一つの生として統括することができないんだ!

だから、構造の異なる種族ごとに作らざるを得なかったと。

そのため、沢山種類が作られてしまって置いておくスペースを大幅に取らなければならないから、小さめに作られているんだろう。

ってことは、この人模型ってセット販売?

「でもこれを前の機に置かれたところで、目が悪い子は見えないし、目の良い子も見難いしで教材として適當かどうかは疑問だわ」

それに私個人の意見では正直、こんなに沢山要らんと思う……各種族の生態だけで年間の授業日數を消化してしまうよ……

まあ、子供からしたら自分の生態の見本が無いとガッカリするのかもしれないが……

などと制作の裏側を想像していたところ、説明書を見つけた。

「ん? あ、これ大きくなるんだ」

どうやら魔力を込めることで巨大化する特殊素材で出來ているらしい。

しかも空気で膨らむわけではないため、この模型そのままの形で尺だけ巨大化するようだ。

「なるほど、こうやって1/1サイズにするわけか。魔界には便利な質があるもんだ」

用が済んだら臺座のスイッチを押して魔力を放散させることで、元のサイズに戻るのだとか。

私が説明書を読んでる一方でリーヴァントは――

「ほぉ~~、人魚の骨ってこうなってるんですね」

――人魚の骨格標本を見て心していた。

私も一緒に見てみたところんなことに気付く。

「凄い! 人魚って本當に人の上半と魚の下半が合してるんだ!」

これは『人魚形態』の時の骨格標本らしい。骨盤から太ももの骨くらいまでは人と大した違いはないが、そこから先はくっ付いて一本の尾びれに集約している。よく見てみると魚のような縦の尾びれじゃなくて、イルカのような橫の尾びれだと分かる。

ただ、魚やイルカの骨と違って太ももから下、尾びれへ繋がる骨全に左右に分かれると思われる亀裂がっている。多分、陸に上がった時にはこの部分が分かれて腳になるんだろう。

その他に、末端の尾びれに関しても通常の魚の骨とは違い、どこか人の足を思わせる骨組み。これも陸に上がると足に変形するためと思われる。

下半を見た印象としては、『魚の骨とは似て非なるもの』というじ。

見終わった直後にリーヴァントが人馬の骨格標本へ目を移したため、流石に時間のことを考えて聲をかける。

「全部見てると遅くなっちゃうから次へ行きましょう」

「ああ、はい……」

『大人になっても何が自分に合ってるか見つけられない』……

私がその一人ですね。果たして何が自分に合ってるのやら……この小説の行き著く先が正解なら良いのですが。

次回で検は終わりです。

次回は10月31日の20時から21時頃の投稿を予定しています。

第519話【アルトレリアに出來た小學校の検 その4】

次話は木曜日投稿予定です。

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