《【書籍化】その亀、地上最強【コミカライズ】》一即発
「ガツガツ、ムシャムシャ、パクパク、ボリボリ!」
僕は今、人の不思議というやつを目の當たりにしていた。
大量にあって、なんなら腐らないようにとすら思っていた食料が、凄い勢いで消費されていくからだ。
あまりにも大きなお腹を音を鳴らした彼は、僕の言葉に食い気味で「お願いする!」と言ってから、僕らのバーベキューに途中參加する形になった。
そしてあっという間にを平らげ、サンシタが獲ってきていた別の獲も焼いては食べ焼いては食べ。
あっという間に僕らが用意した食材を食べ盡くしてしまった。
更にはそれだけでは飽き足らず、余っていた食材にまで手をつけて未だに食べ続けている。
まるで何度も同じ場面を見せられているかのような景が、目の前で繰り広げられているのだ。
今はちょうど、三匹目のイノシシのに手をつけたところだった。
格で言えば僕よりも小柄だというのに、いったいその小さなのどこにそんなに沢山のご飯がるんだろうか。
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「グルゥ……」
サンシタはおやつに取っておいたまでガンガン焼かれて饗されていることに、し不満げだった。
彼の常識だと、誰かにを與えるのは獻上にあたる。
見ず知らずのにそんなものをやる義理はないと、サンシタは最近聞いていなかった、をグルグルと鳴らす本気の唸り聲を上げていた。
まだそんな顔できるんだね、サンシタ。
どうやら空の覇者は、まだまだ健在なようだ。
「バクバク、もぐもぐ、ガリガリ、ごっくん!」
抜きのされていないサンシタ仕様のワイルドなだけど、どうやら彼はそんなことは気にならないみたいで、塩を振っては味しそうに食べている。
うわっ、骨まで噛み砕いて食べる。
ワイルドだなぁ。
顎の力が強いんだね。
イノシシだと薄くスライスしないとくて食べられない僕とは、元のの造りが違うみたいだ。
「グルッ……ガアアッッ!」
どうしよう、サンシタが割と本気でキレかけてる。
どうせ食べるのを忘れて、腐りかけたところを森に帰すんだから、そんなに怒らなくてもいいだろうに。
――そう、サンシタはこんなに怒っているけど、多分あのも放置しているうちに忘れて、結局食べずに終わる運命にあったはずだ。
彼はグリフォンの割に覚えが悪いから、既に似たようなことを何回もしているし。
……いや、鳥頭の割には頭がいいってことにはなるのかな?
まあそこらへんはよくわからないから、いいや。
ちなみにサンシタは、をダメにしかける度に、それを目敏く見つけるアイビーに、食べないなら森に暮らす生き達のために返してきなさいと叱られている。
なんだか親子のやり取りを見ているみたいで僕はその場面に遭遇すると、いつもほっこりするのだ。
それだけじゃなくて、ぷかぷか浮いている手乗りサイズアイビーと項垂れているグリフォンという、外から見ると意味の分からない構図が、シュールな笑いをったりするところもいい。
相変わらずアイビーは綺麗好きで、細かいところにもしっかりと気が付くいい子なのだ。
(でも……どうしてだろう。いつもよりもし、張しているように見える)
けれど今のアイビーはちょっと……いやかなり変だった。
いつものように泰然とした態度ではなく、どこかキリッとした、真剣そうな面持ちをしているのだ。
長いこと彼に寄り添っている僕にはわかる。
アイビーは今、かなり張している。
いったい何に張しているか?
決まってる――目の前にいる、謎のにだ。
僕は見た目から、等級の高い冒険者だとばかり思っていたけれど……どうやらアイビーには、何かが見えているらしかった。
「むしゃむしゃ……ふぅ、とりあえず最低限腹は満たせたか。一旦小休止だな」
サンシタが野生を取り戻さないかハラハラしたり、アイビーの様子を観察したりしているうちに、に持っていく手がようやく止まってくれた。
とりあえず?
最低限?
小休止?
ちょっとおかしな言葉を聞いた気がするけれど、まあそこはおいとこう。
ようやく食べるのに區切りがついて、ちゃんと話ができるようになったんだ。
この機會を逃さない手はない。
というかこのタイミングにどうにかしないと……アイビーとサンシタが、割と一即発な雰囲気を出してて々と危ない!
僕らはまだアクープの人達に完全にけれられてるわけじゃないんだから、ここで刃傷沙汰とか起こすわけにはいかない。
なんとかして二人には、穏便にことを済ませてもらわないと。
ここら辺が僕の腕の見せ所だ。
唯一意思疎通できる僕が、なんとかして彼とアイビー達の仲を取り持ってあげないと。
「ええでは初めまして、僕はブルーノと言います。彼はアイビー、そしてこっちがサンシタ。出會いは妙なじでしたが、よろしくお願いします」
「ああ、挨拶が遅れたな。私はレイという。故あって冒険者のようなことをやっていてな。いきなり押しかけて食事まで出してもらい、大変申し訳ない。これは食事代だ、取っておいてもらいたい」
そう言って彼――レイさんは、金貨十枚をサッと僕の手に握らせた。
――金貨十枚!?
これ、絶対にもらいすぎだよ!?
「こ、こんなにいりませんよ?」
「む、そうなのか……? 市井の価はよくわからないから、困ったな……それなら君……ブルーノが決めてくれ」
え、えぇ……人のこと言えないけど、なんだかこの人もすごく変だぞ。
というかさ、今思ったんだけど。
どうしてこの人は、こんな強い冒険者ルックなのに、グリフォンのサンシタを見てもまったく揺してないんだ?
四等級の冒険者だって、グリフォンの見た目くらいは知っているはずなのに。
それに金銭覚もかなりおかしいし……なんというか、々とちぐはぐなじがする。
「グルッ、グルグルッ! クルゥゥッ!」
「どうどう、かわいい鳥さんだな。鳥さんなのにこんなにおっきいということは、魔なのか?」
「ええ、はい。僕は従魔師(テイマー)なので。ちなみにその子はサンシタと言います」
「そうか、それじゃあよろしくな、サンシタ」
「グルウッ!」
サンシタは差し出された手を……思いっきり噛んだ!?
「くうぅぅぅぅん……」
そして何故か、犬みたいな聲を出したっ!?
見ればレイさんの手はまったくの無傷で、サンシタの歯からはが出ていた。
そ、空の覇者であるグリフォンが歯からを出して涙ぐんでる……。
レイさんっていったい……何者なんだ?
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