《辺境育ちな猿百合令嬢の憂鬱。〜姉の婚約者に口説かれました。どうやら王都の男どもの目は節らしい〜》(23)ダンスはお斷り
ちょっと考え込んでいた間に、何が起こったんだろう。
唖然としていたら、また見覚えのある人が大でやってきた。
今度は腰に剣を帯びた騎士だ。金のモールがしい禮裝は鍛え抜かれた軀を凜々しく裝っている。私と目が合うと、ぱあっと顔を輝かせた。
「リリーさん! ローナが探していたみたいだけど、こんなところにいたのか。でも、またお會いできてうれしいな。任務を部下に代わってもらった甲斐があったよ」
ああ、この人はローナ様のお兄様だ。覚えていますよ!
リスを見に行こうとってくれた優しい人で……ん? リスを見に行くことが目的ではなかった気がしてきたな。
リスしか興味がなかったのは覚えているんだけど……。
思い出そうとしていると、いつの間にか近くに來ていた年の趣きを殘した爽やかな青年が笑い始めた。
「ははは。いやだな、大人が揃いも揃って見苦しいですよ。ご令嬢の張を解すためにも、まずは一番年が近い僕と気楽にダンスを楽しむべきなのに」
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「フィアス男爵家の青二才が口を挾むな!」
……また睨み合いが始まった。気のせいでなければ悪化している。
私を囲んでいるのは、十人くらいかな。知っている顔は二人だけで、あとは初対面だ。
いや、それは別にいいんだけど。名前を聞いても覚える気が全くないから、すぐに忘れてしまうんだけど。
なぜ、私の周りに來るの?
私は十六歳になっているから、舞踏會で堂々と踴れる年齢だ。でも不幸なことに発育が普通の人より遅くて、悔しいくらいにい外見をしている。
メイドたちが腕によりをかけてくれたから、我ながらっぷりに磨きがかかっているとは思うけど、細くて平べったい型も丸わかりで、子供っぽさも全開なのだ。
なのに、いい大人たちが目をキラキラさせながらダンスの申し込みをしてきている。
なぜ、その熱意をオクタヴィアお姉様に向けないの?
王都の男たちは、やっぱり目の代わりに節が標準裝備されているんだろうか。
そもそも、田舎から出てきたばかりのアズトール伯爵の次と知っているのなら、領地での噂もしは聞いていると思うんだけど。
領民たちに「白百合姫」ではなく「猿百合姫」と呼ばれている時點で察してほしい。
……つまり。いきなりダンスにわれても、本気で困りますから!
「ごめんなさい。私、ダンスは苦手なのです」
ちょっと令嬢っぽい言い回しで、正直に自己主張してみた。
すると周囲の男どもは、一斉に黙り込んだ。食いるように私を見つめ、何かに耐えるような顔をした。ほのかに顔を赤らめている人もいる。
ねぇ、なぜそこで黙り込む? なぜ頬を赤くする?!
「か、かわいい……」
「守ってあげたい……」
「ダンスの個人レッスンをしてあげたい……」
「あの小さな足で踏んでもらえるなら、ダンスなど下手なままの方が……!」
……は?
なんだか、今、また変な言葉が聞こえたような……また耳が呪われたのかな? 呪いだよね? これって絶対に呪われているよねっ?
ドン引きしながら慄いていると、なぜかさらに人數の増えた男の人たちが、我先に私に一歩近付いてきた。
「大丈夫ですよ。ただ私と一緒に音楽に合わせてくだけでいいんです」
「ステップなんて気にしなくていいよ。覚えていないのなら、僕もぐちゃぐちゃのステップを披しますから!」
「君の年齢なら、たどたどしいのも可らしいものだぞ」
いやいや、全開の笑顔で言われても困るから。
この人たち、全然話を聞く気がないよね。もしかしてクズ男の同類もいるのかな?!
私は斷ったんだから、さっさと諦めてください!
……はぁ。
もう、全てが面倒になってきた。
舞踏會では大人しくする、とオクタヴィアお姉様と約束していたけど。
ここから逃げ出そう。うん、そうしよう。
「…………あっ」
私は遠くを見て、小さく聲を上げた。
ちょっと目を見開いて、驚いた顔をしてみせる。もちろん、男たちは何があったのかと、私の視線をたどって一斉に振り返った。
仕掛けたのは私だけど。
……なぜ、全員が引っかかるんだろう。
そう心の中であきれながら、私は気配を消して素早くいた。
遠くから見ている人がいたら、ちょっと早足でいた程度に見えるだろう。でもこういうのはタイミングだ。あっという間に私は男の人たちのから抜け出すことに功した。
向こう側に目を向けている男の人たちのから抜けると、そのまま壁沿いに逃げて行く。
何もなかったことに気づいて振り返った時には、人ごみのせいで私を探せなくなっているはずだ。
私は一気にバルコニーまで歩いて、それからやっと振り返った。
さっきまで私がいた場所で、男の人たちが右往左往しているのが見えた。まさかこの距離まで移しているとは気づいていないようだ。
ま、當然だね。
「ふっ。ちょろいな」
私はニンマリと笑い、するりと窓からバルコニーへと出た。途端に、涼しい風が頬に當たる。
バルコニーには誰もいなかった。広間の中央部から離れているためかもしれない。これがもうし遅い時間だったら、ちょっと盛り上がった男がいたかもしれないけど、まだ舞踏會は始まったばかりだ。西の空にはまだ夕方のが殘っていて、暗闇にはまだ遠い時間なのが幸いした。
私はようやく一息つくことができた。
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