《聖が來るから君をすることはないと言われたのでお飾り王妃に徹していたら、聖が5歳?なぜか陛下の態度も変わってません?【書籍化&コミカライズ決定】》第32話 長い長い、冬の終わり
すぐにユーリさまが部屋の中に招かれた。
珍しく張した顔で、彼がうやうやしく首を垂れる。
「……ご無沙汰しております、サクラ陛下」
「久しぶりですね、ユーリ」
しばしの沈黙。
私と大神は固唾を呑んで見守っていた。隣に戻ってきたアイだけが、ひとりもっちゃもっちゃとぼたもちを食べている。
ふぅ、とサクラ陛下が息をつく。
「……こうしてみると、あなたは本當にあの人に似ているわね。でも、目だけは全然違う」
「そう、でしょうか。私は父の顔をほとんど覚えておりません。數えるぐらいしか會ったことがないので」
ユーリさまの言葉に、サクラ陛下の目がかすかに見開かれた。
「……そう。そうよね。あなたも、々大変だったものね。それなのに、私と來たら自分のことばかりで……本當にごめんなさい」
「っ……! いえ、サクラ陛下が謝るようなことでは」
驚いて顔を上げたユーリさまに、サクラ陛下が首を振る。
「いいのよ。私はあなたに……罪もない子に、ひどい態度をとってしまったもの。それに私が聖の力を失ってから、あちこちを駆けずり回って國を守ってくれたのは、他でもないあなただったのでしょう?」
サクラ陛下が言っているのは、ユーリさまが所屬していた騎士団だ。
聖である陛下が力を失うと同時に増えた魔の討伐に、誰よりも多く立ち向かったのがユーリさまが副隊長を務める第五騎士団だったのよね。
「當然のことをしたまでです。生まれ育った國を守りたい気持ちは、みな同じですから」
ユーリさまの堅苦しい返事に、サクラ陛下がふっと笑う。
「……それは簡単なように見えて、とても難しいことなのよ。息子たちに爪の垢を煎じて飲ませたいわ。……ユーリ、本當に立派になりましたね。苦しい環境でも歪まずに育ったのは、きっとあなたのお母さまがとても大事に育ててくれたからなんでしょうね」
それから、サクラ陛下が姿勢を正した。
「ユーリ、いいえ、ユーリ國王陛下。これからは、みなで協力して聖アイやこの國を支えていけたら、と思っているの。私もその一員に、加えてもらえるかしら?」
その言葉に、ユーリさまが深々と頭を下げる。
「もちろんです。サクラ陛下」
それを、私とホートリー大神がほっとをでおろしながら見ていた。
長年凍り付いたままだったサクラ陛下の心が、いまようやく日の下に解き放たれようとしているのだ。
大神と顔を見合わせてうなずいてから、私はアイの方を向いた。見るとアイは、自分がどんなすごいことをやってのけたのか無自覚のまま、うつらうつらとしはじめている。
ふふっ。ぼたもちをお腹いっぱい食べて、眠くなってきちゃったのね。
椅子から転げ落ちないよう膝の上に抱っこで移させてやると、アイは私のにもぞ……と顔をうずめてから、本格的に寢息をたて始めた。
気づいたサクラ陛下が、あら、と聲をあげる。
「しばかり話が長すぎたようね。この狀態で馬車に乗せるのもかわいそうだし、今日は泊って行きなさい。せっかくだもの、皆で夕食を食べましょう。ユーリ、もちろんあなたもよ」
再度名指しされて、ユーリさまはしだけ驚いたようだった。
「……私がいては、迷ではないのですか?」
「先ほども言ったでしょう。私もその一員に加えて、と。それはアイちゃんのことだけではないわ。ユーリ、私はあなたとも、新たな関係を築いていきたいと思っているのよ。……それとも、私と仲良くするのはやっぱり嫌かしら?」
ちら、とサクラ陛下が様子を伺うようにユーリさまを見る。口調はややつんけんしていたが、その顔にはかすかな照れが覗いていた。
ユーリさまは始め目を丸くし、それから、ふ……と穏やかな顔になる。
「いいえ。ぜひ、私も同席させてください」
それは、サクラ陛下と、それからユーリさまにとっても、長い長い冬が終わった合図だった。
彼らもまた、の繋がらない親子。それを取り持ったのは、すやすやと寢息をたてて眠る、小さくらしい桜の妖だった。
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