《最弱能力者の英雄譚 ~二丁拳銃使いのFランカー~》14話

奴の巧妙なけ、ロボットのような正確なカウンターにどれほどの努力を要してきたのかと分かる。

さすがはトップを張っているだけはある男だと思った。

ここまで戦えていた自分にも賞賛を送ってやりたいと自分ながらにも思ってしまう。

俺と奴との距離は、おおよそ15メートル。

「全ての行が、まさに無能力者の限界といったところだな最弱《Fランク》よ。お前の人生を映したような淺い攻撃ばかり…… お前はその程度の男か?」

奴は右手を握りしめ、挑発するかのように正面にいた俺の方へとばす。

目からは俺の限界を図ったようにも見えて、今までの冷靜さを欠いてしまいそうになった。

(黙れ)

その挑発を殺すように弾丸を奴めがけ放つ。

さきほどとまったくと変わらずに、蚊取り線香で勢いをなくしてしまった蚊のように、奴の目の前で落ちた。

まだ試していなかったことがあったので、実行に移そうと考えた。

それは弾丸を何発も同じところに打ち込むことだ。

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さすがのバリアでもこの攻撃では壊れるのではないか。そう考えついた。

「その攻撃は無駄だと、骨の髄まで理解できたはずだが」

そう言い奴の右のがニタリと上がる。

「言っておけ」

2丁の銃で弾丸を重ね、リズミカルにだた1點だけを集中的に狙う。

一度バリアに當たった弾を、さらに弾で押し返すようだ。

撃って撃って、撃ちまくる。

連続で発されたため、高熱の薬莢があたり一面に散らばる。

この銃SIG SAUER P228 XXダブルクロス 改は、その軽さ、握りやすさで、き回って戦闘を行う俺にはお似合いの武なのである。

連続発によるジャムの心配はない設計にされている。

飛び出た薬莢は前方に飛んでいくようになっていて、すべての調整、改造は剣先生によって教えられた。

的による一極點集中攻撃か、並外れた撃の技だ。賞賛に値する」

奴の顔面へと弾は何発も発される。

その度に無殘に地へと落ちていった。

結果は何も変わらない。何でも通さないという『絶対領域』の無明なバリアはまさに拒絶という言葉が似合っている。

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さすがは拒絶の王と呼ばれるほどの頑丈なバリアだ。

俺はこれ以上は弾の無駄だと判斷した。

銃を瞬時に懐へとしまう。

「どうだ、気が済んだか無能力者よ」

彼は仁王立ちをして俺を見據えている。

まさに鉄人、何重にも重なった分厚い巨大な壁だと奴をみてそんな覚に陥る。

壁があるならぶっ壊す。ただそれだけだ。

「やっぱり拳でしかお前と戦えないみたいだな」

自分の拳を前にいる奴に向け、中指を立てた。

結局は拳なんだろうとはづいてはいた。こいつには小細工など通用しない。

俺は再度奴の方へと全速力で駆ける。隙を作るためにと、同時にナイフを投げる。

奴の顔面に吸い付かれるように空中を切り裂く。

全力で振り下げ、義手のパワーを存分につかって放たれたナイフ。

肩の関節が悲鳴をあげる、限界はとうに來ていたと認知はしていた。

「來いッ!! 無能力者!!」

「ああ、ぶっ壊してやるぜ」

奴はすぐさまナイフを摑み、俺の顔面へとそのデカい拳を振りかぶった。

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その隙を見計らい、地を速度をさらに加速。

度重なるの行使により、きしむような痛みが全を包む。

こんななんて、どうなってもいい。

から振り上げた奴よりも、早く懐へとっていた。

すぐさま巖窟のような顔を左腕でアッパー、そのまま上にびた重移で、腹の脊髄中核を砕くように何度も何度も毆る。

普通の人間ならば臓が破壊されて、途中で死んでしまいそうだが、念には念をれ、さらに何度も叩く。

を毆っているにも関わらず、その腹は鉄の要塞のように軋むことを知らない。

奴は攻撃を食らいながらも、一言もを上げることはなかった。

そして上げた腕を俺の方へと振り下ろした。

十分に避けることができたパンチ――寸分で避ける。

奴の攻撃は遅くて重い。しっかりと見極めれば避けることは可能だ。

避けた重移を使い、先ほど何度も毆り続けたみぞおちをフィナーレと言わんばかりに、義手のパワー全開で叩き込んだ。

ドズッ!!

と金屬がぶつかったとは思えないほどの鈍い音。

たしかに攻撃は急所へと當てたはずなのに……

(あれだけ人的急所を毆り続けたんだぞ…… 何かがおかしい)

「ふんッ…… 甘いわぁッ!!」

奴はそれを見計らっていたのか、完全なる読みの攻撃によるものだろう。

何百Kmもの上空から落とされた鈍のようなものが、背中にぶち當たった。

肺は衝撃で紙パックを勢いよく潰したように、ぺしゃんこになったのをじる。

勢いよく地へとズレ落ち、板に近い肋骨が、五本ほど折れた音が聞こえた。

そのうちの何本かが肺に刺さったのか、瞬時に潰れた肺を治すようにと呼吸する度に、とんでもないような肺損傷による激痛が襲う。

すぐさま奴は俺の髪のを引っ張り上げ、威厳な顔立ちで俺の顔を宙に飾るように見た。

「ここまでやれる無能力者の貴様に私から賞賛を送ろう。無能力者よ、『拒絶の王』のメンツを守るためにもここで死んでおけ」

奴は左手に見えない刃を持ち、突き刺すのだろう、勢いよく後ろに振りかぶった。

そして刃で心臓を突き刺そうと、その左手を俺を串刺しにすべく、見えない刃を持った手は近づいて行く。

俺は渾の膝蹴りを、奴の突き刺そうとした腕に當てた。

その回転力で、奴のを踏み臺にしてを逆上がりの要領で振り上げる。

奴の手は、俺の髪のから離れた。そして後ろに回るようにきれいに著地。

著地點は奴とは、約5メートルほど離れている。

すぐさま義手のフルパワーで地面を毆り、地上から奴めがけ飛び上がった。

地上高く飛んだ、天を泳ぐ鷹のように。

「その神力、お前を倒すのが惜しいぞッ!! 無能力者よぉ!!」

奴は見えない刃を両手持ちして、上半を縦に振りかぶった。

――我が骨を切らせて、敵の頭を斷つッ!!

奴の攻撃を左肩から近いにかけ、ける。

序に僧帽筋を切られ、破に鎖骨の斷裂音が魚の首を切り落とすように聞こえる。

棘上筋、棘下筋、広背筋に続き、急は鎖骨の中央辺りを切り捨てされた。

軽く左肩を前に出していたおかげか、空中に分斷された臓、心臓が勢いよく吹き出る。

そしてまだらの絨毯のように、俺を覆い隠すように広がっていく。

迷わずにに懐から銃を取り出し、彼の方へと急降下。

「これで終わりだあああああああああああああ」

奴の額に取り出した銃口を、刺すように突き付け、そして放った。

心なしか、いつもよりトリガーは、軽くじる。

俺は自らのの弾かれたエリアに綺麗に著地。

捨てのゼロ距離の撃、奴の脳が振を震わせた。

は神経のエラーバグのように、中を痙攣をする。

そして機能の停止したロボットのように、奴は気絶。

その姿を確認した俺は――天へと右手を掲げる。

は出盡くしたのだろう。俺のから噴水のように湧き出ていたは、涙を流しているように流れている。

同時に視界が、深淵なる黒の境界へと霞んでいった。

「やったぜ――俺は。マイ、剣先生、ユウッ……」

(ああ…… これ死んだな……)

まぶたの下から白くる無數のライトが、空を飛ぶ鳥のように上から下へと飛んでいくように見える。

かすかな意識の中、左右から男たちの聲が聞こえた。

「コードネ…… ミ、ヒュドラ検ST―2…… 神生存を……」

神が死ぬ前…… 実行する、右手を……」

ああ…… やり切ったな。俺はこのまま死ぬんだろうか。

頭にが登っていないのか、男たちの會話は俺の耳にはってこない。

そんなことはどうでもいい。もう疲れた。

俺はいつか見た、いや幾度となく見る夢の場面を一から見ていた。

眼が閉じており、覚からは俺の両腕は縛られ、両足も暴れぬようにと、がんじ搦めにされているのがわかる。

そしてずっと一緒にいたいと思っていた懐かしい聲。

「被検を連れてきた」

「所長それは…… あなたの……」

「わかっている。いいから始めるんだ時間が無いッ!!」

「しかし、功するかはッ……」

「(ドスッ)つべこべ言わず早くやるんだッ!! お前らも早くしろッ!!」

「はいっ!!」

閉じた目は開かず、聴覚からの報を頼りに外界の報を得る。

分かる。この後は……

頭を何か鋭い兇で切り裂く覚が。

「痛いああああああああああああああああああああああああああああああ。父さん!! やめてよ!! 止めてよおおおおおおおおおおおおおおおお!! ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!! お父さあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん」

と、僕は心の中で訴えていたんだ。だけどはいうことは聞かない。

強制終了されたパソコンのように思考は止まった。

気づくと目が覚めていた。

だけど更なる地獄はここからだった。

辺り一面は火の海。

施設と思われる建は、天井が開いた箱の蓋のように飛ばされており、周りの炎と対をなすようなき通る青空。

が熱かったけど、右手のほうには更なる激痛があった。

きができない僕は、自が漕げ落ちる覚を、じっくりと、ゆったりと、綺麗な川の流れのように鮮明に味わった。

その後、この世のものとは思えないほどの凄まじい、旋、熱量、風、音、痛みが僕を襲った。

瓦礫は小さく殘っていた腕を潰し、熱はの渇きを無くし、風は僕のを空中へと飛ばし、音は焦がれた耳を壊し、旋を奪い、痛みはを壊した。

人はを壊すと、どうなるのだろうか。

答えは簡単だ。無機のように、何もじることは無くなるのだ。

冷たい無になる。

それでも生きていた。

僕は、が壊れても、この現実≪あくむ≫から降りることはできなかった。

そんな暗闇で、僕を見つけてくれた人がいた。

彼の腕に抱かれ、無は有へと変わった。

あの時の彼の背中は大きかった。

僕のお父さんと同じくらいに。

それが僕の憧れている人だ。

「タスクッ!! なんでッ…… だめだよ先にいっちゅあああああああ! この前のプリン食べたのは私だったの! タスクのプリンって知らなかったのぉおおおおおおおおおお!」

「タスク兄さん! 死なないでええあええええええうええええええええええええ! おぇっ! うぉうええええええええええええ…… オロロロロロロロ」

「タスク! 別れが早すぎるだろうっ! 何も言うことがない! ドリチン野郎!」

どうやら俺はどこかのベットで寢ているらしい。

足の覚から、何か左右の足の方で3つほど重いものが乗っかっている。

そして勢いよく布団を捲り上げ、こうんだ。

「うるせえええええええええ! てめぇら俺がぐっすり…… って俺は死んでねぇよ!! 何勝手に……ってゲロくせっ! それとプリン今から3人で買ってこい! それと何も言うことが無いからって、ドリチンは野郎はないだろ!」

3人の顔を一人づつ、子供を叱っている保育士のように顔をしっかりと見る。そして罵聲を投げた。

そしてすぐに布団に潛り、意識をレム催眠へと移行した。

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