《異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編》第140話 タイマン?

レベル10火・水・複合魔導「天上門ウリエル」

この魔法によって生み出された白い炎は者がMP供給を止めない限り燃え続ける。本來は味方にかけるもので、対アンデットにおける最強の鎧を付與する魔導であった。

炎にれたアンデットにも炎が移り、その炎は水をかけようが真空にしようが消えることはない。連鎖的にアンデットをあの世へと送る最強の対アンデット魔導。レベル10だけあって規格外の強さである。

しかし、俺の魔法から逃げ切ったゾンビ達がいる。

ナキータとメラクである。

AGIが千近くあって早々に効果範囲から離していた。

「取り敢えず英雄級ゾンビは二人まで減らしました」

「流石はレイン様、お見事です」

「え、え、ははぁ……」

スクナは割と平然としているな。まあ迷いの森でも似たような魔法使ったことあるからな。それよりも……。

「アースター將軍、レボリア將軍」

「「っは!!」」

突然聲を掛けられた二人は一瞬戸ったがすぐに敬禮する。

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「私とスクナはこれから逃した英雄級のゾンビ、及びウィンガルド、フレッグスを抑えに行きます。そこで先程と同じ指示になりますが、今日一日、私達抜きで帝國軍を抑えてください」

まだ半分以上MPは殘っているとはいえ、流石にこの四人と戦いながらこちらの戦場を気にかける余裕はない。

「攻める必要はありません。ゾンビ二と魔將のどちらか一人でも倒せれば、後は軍の戦いになります」

出來ればウィンガルドを倒したいがそれは難しいだろう。それでも神眼があればウィンガルドに常に意識を割きつつ、帝國軍との戦いにも介できる。

それに幾らウィンガルドが英雄級魔導使いといえど、軍なくして王都は落とせない。MPに限界があるからだ。

「今日中に終わらせられるように私達も頑張りますので、そちらはよろしくお願い致します」

「ははっ! レイン魔導將も武運を!」

ーー。

馬を使い戦場からし離れた場所に移する。

そしてMPを一気に放出させ、俺の居場所を教える。

「乗ってくるでしょうか」

隣にいるスクナが心配そうに聞いてくる。

「乗ってくるでしょうね。帝國軍が勝つ手はそれしかないですから」

俺が攻撃魔法が使えないと知らない彼らからすれば、罠だとしか思えないこの狀況でも飛び込まざるを得ないだろう。

「ただちょっと様子がおかしいんですよね」

「様子がおかしい……ですか?」

「ええ。近付いてくるのが一人だけ。ウィンガルドだけみたいなんですよね」

こちらに馬で走ってくる人影は一つだけ。

「敵の作戦、ですか?」

「どうでしょう?」

などと惚けてみたが、本當は知っている。仲間割れだ。

俺の今の行を見て千載一遇の機會だと四対二で戦おうとするウィンガルドと、先程の俺の魔導を見て完全に逃げ腰となったフレッグスの間で言い爭いがあった。

結果、フレッグスはの黒づくめの怪しい奴らを連れて何処かに行ってしまった。

罠を仕掛けに行った、などではない。

本當にこの戦場から逃げてしまったのだ。読が使える俺が神眼で確認したから間違いない。

「とはいえ、それはそれで困るんですけどね……」

フレッグスがポルネシア國で暗躍することになってしまう。もちろん後で指名手配するが、捕まるかどうか。

ウィンガルドはウィンガルドで厄介だが、話は噂では話は通じる人間だという。人格者とまではいかないが、良い噂も度々耳にする。

しかし、フレッグスのまともな噂を聞いたことがない。死りゾンビと化して敵を襲わせるような奴だ。人道的、などという言葉は奴の辭書には載っていないに違いない。

そうこうしているうちにウィンガルドが俺達の所まで來ていた。

ザッと音を立てながら馬を降り、馬のを叩き自軍へと走らせる。

「……」

「「……」」

因縁の相手だ。3年前、ウィンガルドによって多くの犠牲が出た。俺はそれほど繋がりがあったわけではないけれど、お父様の腹心が何人も奴に切られ、俺自腕を切られた。

沈黙。

三人の間で流れた沈黙はウィンガルドによって破られる。

「……!? スクナ!」

ウィンガルドのHPとVITが凄い速さで激減し、減った分だけAGIが増加する。

レア度7スキル、ステータス移

三千を超えるAGIが可能とする超速移。五十Mはあった距離を一息で詰めて俺達に薄したウィンガルドに対し、スクナも応戦する。

左手に持った盾でウィンガルドの一撃を見事防ぐ。ウィンガルドが驚いた一瞬の隙に右手に持ったシミターで切り返す。

だが、寸前でバックしたウィンガルドにはれることはできず、再度距離を取られる。

「チッ……」

ウィンガルドが悪態をつく。

「化けの護衛もやっぱり化けか? てめぇ、何もんだよ?」

「……初めまして。私の名前はレイン・デュク・ド・オリオン。オリオン家が嫡男にして、臨時ではありますがポルネシア王國の魔導將の地位をいただいております。そしてこちらがスクナ。私の奴隷頭です」

貴族の禮をしながら俺とスクナを紹介する。

「奴隷……頭? 奴隷、なのか? 高々奴隷が俺の剣を?」

「ええ、小さい頃よりずっと私の側で仕えてくれた従者です」

「スクナと申します。短い間ではありますが、どうぞよろしくお願い致します」

スクナも油斷なくウィンガルドを見ながら會釈する。

「……一応言ってみるが、こちら側に著く気はないか? そいつを裏切るなら大金貨五千枚を約束するが?」

「お斷りします」

大金貨五千枚。ポルネシアなら王都の一等地に豪邸を建てて末代まで遊んで暮らせる金額。

スクナはそれをあっさり斷った。ここでスクナに裏切られると俺は背中をみせてダッシュで逃げる必要があるからよかったよ。まあ裏切らないと信じてたけどね。

「ま、だろうな……」

無理だと分かっていたのだろう。あっさりと諦めてしまった。

「では、私からも一ついいでしょうか? 帝國の……北部制圧軍とでも申しましょうか。貴方方にはもう一人、六魔將が來ていたはずです。闇のフレッグス、でしたか。複數対二を予定していたのですが、貴方だけなのは何故なのでしょう?」

「奴なら逃げた」

「逃げた……ですか? 帝國の六魔將ともあろう方が、ですか? 々信じられませんが」

「信じる信じないはお前の自由だ」

うーん、なんか本當っぽい。あんな危ない人間をこの國で解き放つのはやめていただきたいのだが。

「……では、仮に逃げたとしましょう。失禮ながらもう一つ。貴方方はどうやって森エルフの領域を抜けて來れたのでしょうか?」

「……知りたきゃ俺を倒して聞け」

「そうですか。それは殘念です」

話はここまでのようだ。再度中腰に構えたウィンガルドは殺気を剝き出しにしており、いつでもこちらを斬れる態勢になっていた。

スクナも俺の前に出てきて剣を構える。

「俺からも一つ」

「……? 私に答えられることでしたら」

即発の空気の中、今度はウィンガルドから質問をしてきた。

「3年前のあの日、あそこに居たのはお前か?」

3年前のあの日。ウィンガルドが聞いているのは當然あの時のことであろう。もう隠す必要もない。

「はい。その通りです。あなたに深傷を負わせ、その代わりに腕を切り飛ばされたのは他でもないこの私です」

「……そうか」

聞きたいことはそれだけのようだ。しかしフレッグスが本當に逃げてウィンガルドしか來ないのなら俺は戻りたいくらいだ。ウィンガルドとのタイマンなど無意味極まりない。

「まあ……、早くこの戦爭を終わらせるに越したことはありませんがね。スクナ!」

「はっ!」

既にスクナには補助魔法をかけてある。

「完全ジ・オール」

MP以外の全てのステータスを発的に上昇させるステータス上昇系魔法の最高位。

俺の目ですら追えない一瞬の剣戟が目の前で繰り広げられたのだった。

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