《幽霊公(プランセス・ファントム)》3.
翌日、晝食の時間も過ぎた頃に起き出したユーディトは、何をするというでもなく、サロンでうとうととしていた。
食事は要らないと斷ったが、コーヒーを頼むとレモン・タルト(タルト・オ・シトロン)も一緒に運ばれて來たので、それだけはきちんと食べた。
冷たい雨のしとしとと降る気な日だったが、ほどよく暖められたサロンは、うたた寢には悪くない。
昨夜リールゥが「明日はこれ著てね」と選んでいったドレスは、元に切り替えのっている、楽な著心地ものだった。それでも、艶のある深藍の生地で仕立てられたドレスは、蜘蛛糸で編まれたような繊細なレースが元や袖口にあしらわれていて、決して地味ではない。
髪を結い上げるのは、億劫なのでやめてしまった。
どうせ日中は何もできないのだ。貓足のカウチに寢そべると、ユーディトは夢の世界に渡っていった。
*******
端の見えない、長い廊下を歩いていた。パリの彼の屋敷には、こんな廊下は無かったはずだ。
カツーン、カツーン、とブーツの華奢な踵が、いやに大きな音を立てる。
廊下には一定の間隔で、扉が並んでいた。自分は最初の扉の前に立ち止まると、それを開け放った。突然、野太い中年男の話し聲が流れ出した。
ああそうだ、これは魔に取り憑かれた大學教授の夢だ。虛栄心に支配された彼の心は、闇の住人を呼び寄せた。消えない名聲をとんだ彼は、そんなものなど與えられるはずもない、平凡な魔に壽命を投げ渡した。
ファウストになり損なった男は、夢の中でも演壇に立って弁舌を振るっていた。
男の気は不味かったが、彼の魂を吸った魔は中々だった。
踵を返して部屋を出ると、次の扉へと進む。カツーン、カツーン、と足音だけが妙に生々しく響く。
次の扉を開くと聞こえたのは、子供の泣き聲だった。
これは流行病で子を亡くしたの夢。嘆き悲しむ母親の心の闇は、魔の甘な餌だ。彼に絡みつく魔を、ユーディトは次々と食べた。子供の霊は、その中にはいなかった。
ここに並ぶのは、これまでに彼が覗いた人々の夢だ。
次の扉は、葉わぬ想いに囚われた、若い男の夢だった。敵とするをその手で殺し、それでも満たされない想いから闇に墮ちた。愚かなこと、とユーディトはあざ笑う。暗い彼の気は、最後の一滴まで飲み干した。
いつしか、彼は最後の扉の前に來ていた。何故かしためらってから、取っ手を回す。すると口を開けたのは、底の見えないぽっかりとした虛空だった。
それが誰のものか理解した瞬間、び聲とともに現実の目覚めが訪れた。
「悪い夢でも見たのですか?」
目の前には、し驚いたような表のアドリアンが立っていた。手にはショールを持っている。
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